遺言書を書いておいた方がよいケース
1.遺言書とは
遺言書を残しておくことで、自分の財産を自分が相続させたいように相続させることができます。
親が自分の考えをきちんと残すことで子供たちは親の思いを受け取ることができます。
「遺言書まで書く必要があるのか?」と相談されることも多くあります。
遺言書を残していなかったために、たとえば残されたお子様たちの間で「親父とそんな約束をしていたからと言って証拠はない。口約束は無効だ。」と揉め事になり、争族に発展してしまうケースもあります。
そのため、遺言書はあって邪魔になることはありません。
親の意思を正式な書面に残す事で、ひいては、円満な相続につながることになります。
よく用いられる遺言の方式として、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つが挙げられます。
2.遺言書を残しておくことのメリット
・自分が相続させたいように相続させることができる。
・親が、子供たちへどのようにしてほしいのかを伝えることができる。
・遺産をどのように分けるか、遺産分割の話し合いをしなくて済む。
・相続手続きがスムーズになる。遺言書があることで相続手続きが楽になり、相続人の負担が大幅に軽減する。
3.特に遺言書を残しておいた方がよいケース
特に次の6つのいずれかに該当する方は、ご自身の想いや決断が法的に有効になるように、心身ともに元気な(健康な)うちに遺言書の準備をすることをおすすめいたします。
遺言書は、作成した後はいつでも書き直すことができ、又は全くなかったことにも(撤回すること)できますので、遺言書が書けなくなる前に今のお気持ちを遺言書に残しておきましょう。
・相続人がいない方
相続人が誰もいない場合、あなたの財産は最終的には国に帰属することになります。
もし、お世話になった人や介護や身の回りのお世話をしてくれた人に財産を残したいと思っても、遺言書がなければその人には相続させてあげることができません。
相続人以外の方に遺産を渡すには、遺言書を作成する必要があります。
・子供がいない夫婦
子供がいない夫婦の場合、相続人となるのはまずは配偶者と被相続人の親(又は祖父母)、親が亡くなっている場合には、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となります。
夫婦で築いてきた財産ですので、配偶者だけが相続するとお考えになる方もいらっしゃいますが、法律はそのようにはなっていません。
配偶者と「亡くなった方の家族」が相続人となります。
つまり、配偶者は、義理の両親や義理の兄弟と遺産の分け方を話し合うことになるのです。
配偶者と被相続人の親族の関係によっては、話合いがこじれて、深刻な相続トラブルに発展する可能性もあります。
子どもがいない場合[理加1] [晋奥2] 、配偶者や、ご自分の両親・兄弟姉妹に負担をかけてしまうおそれがあります。
遺言書を作成し、事前に財産の配分を決めておくとことで、残された配偶は遺産分割について義理の親族と話合いをする必要はなくなります。
・離婚・再婚して相続権のある子供が複数いる(前妻の子供、後妻の子供、相手の連れ子など)
過去に離婚・再婚しており、相続権のある子供が複数いる場合、離婚しても再婚しても子供は子供であるため、どの子にも平等に相続する権利があります。
例えば、離婚して疎遠になっている子供と、再婚後の子供が遺産の分け方を話合うことができるでしょうか?
今、どこにいるのかわからない、今まで一度も会ったことがない、というケースもあるでしょう。
こうした場合にも、相続人同士の話合いがこじれてしまい、トラブルに発展するおそれがあります。
もし遺言書がなかったとしたら、子供たちの負担は相当なものです。
トラブルを防ぐためにも、遺言書を残して、相続させる人をあらかじめ決めてあげましょう。
・会社(事業)を経営している
事業を継がせる子供や第三者には、会社経営に必要な財産を引き継がせなければなりません。
事業を継ぐ人が、会社経営に必要な財産を相続することができなければ、会社の経営が破綻する危険があります。
たとえば、株式や事業用財産を、会社と関係のない人が相続したらどうなるでしょうか。
会社の株式が散逸して経営が困難になったり、事業のために必要な財産を売却されてしまったりするおそれがあります。
事業に必要な財産を、確実に後継者へ引き継ぐために、必ず遺言書が必要です。
・相続人の中に行方不明や連絡の取れない方、海外に住んでいる方がいる
相続人の中に行方不明の人、連絡の取れない人、海外に住んでいる人がいても、遺産分割の話合いは、必ず相続人全員でしなければいけません。
行方不明の人や音信不通の人にも、必ず連絡を取る必要があります。
もし、どうしても連絡が取れない人がいる場合には、その人の代わりとなる代理人を裁判所で選任するなど、余計な手間と費用がかかります。
こうした手続きがすべて終わるまで、預金などの財産を引き出すこともできません。
遺言で財産を相続する人を決めておけば、遺産分割の話合いをしなくとも遺産を分ける手続きを進めることができるため、行方不明の相続人がいる場合でも安心できます。
・相続人間の人間関係が悪い
相続人同士の人間関係が悪く、話合いで解決することができないことがわかっている場合には、必ず遺言書を残して、財産の分け方を指定してください。
相続人同士の関係が悪く、遺産の分け方について対立が深刻な場合、裁判所での手続きである遺産分割の調停(話し合い)が長期におよぶケースがあります。
その間に相続人の方が負担する精神的・経済的な損害は計り知れません。
この場合、あらかじめ遺言書を残しておくことで、相続発生後のトラブルを防ぐことができます。